2012/3/4 日曜日

SUZUKI「OLIVE」記事 Vol.3 最終回

Filed under: Harmonica — koei @ 19:29:15

OLIVE記事の最終回として、どのような音楽、プレイスタイルに向いているか、など思いついたことを書いてみたいと思います。

MANJIとは実質カバー形状だけが違い、リードとコムは同じ材質のものを使っていることは何度もお話していますが、吹いてみると一発でわかると思いますが、カバーが違うだけで「こんなに違うもんなんだ〜」と感じるはず。
リードが発音した後の響き方、息の流れ方、自分への聞こえ方、音量etc…  リード、コムで作られた音は最終的にカバーによって最後の味付けがされるのです。

まず間違いなく言えることは、メロディックなプレイスタイルにはストライクど真ん中ということ。
しかし「メロディックスタイル」という言い方も曖昧ですよね……(笑)

ちょっと整理してみたくなりました。

10ホールダイアトニックハーモニカには大きくわけて2つのスタイルがあります。一つはブルースやロックなどでソロを取るスタイル。この場合、ボーカル(メロディー)がいて、基本的にハーモニカはソロ部分で使ったり、アンサンブルに入ったりする。これを「ブルーススタイル」と呼びましょう。
そしてもう一つはメロディー自体をハーモニカが取る。いわゆる歌ものでなく「インストルメンタルミュージック」として使うスタイル。もちろんジャズもこちら。これを「メロディックスタイル」と呼びます。

なんで「ブルーススタイル」と「メロディックスタイル」を分けるの???? ごもっともな意見です。そもそも他の楽器ではそんなのをわけてはいませんからね。

これにはまず「チューニング」という違いがあります。「純正律」と「平均律」というやつですね。
一般的に純正律は「和音が綺麗に響く」とされているチューンングです。そう、10ホールにとってとても大事な奏法である「バンプ」(3つくらいの穴を同時にくわえてリズミカルに和音を刻む)が綺麗に響くわけです。ブルースを基調とする音楽においては、少々極端な言い方をすれば、その演奏方法の基本がバンプ、と言えるのです。バンプ奏法からの延長でフレーズを操る。特にアメリカのブルーススタイルプレイヤーはみんなチューニングにかなりこだわっているようです!
純正律チューニングでドレミファソラシドと吹くと、それぞれの音が微妙にズレています(チューナーの真ん中に針が止まらない)。その特定のズレが和音の時に綺麗に響く秘密ということですね。しかしこのズレがメロディーを吹いた時には、ほんのわずかに違和感を感じることがあるのです。ピアノとのデュオでとても綺麗で繊細な曲などを演奏すると感じやすいかもしれないですね。

それに対して「平均律」は、ドレミファソラシド、それぞれの音がズレることなく正確。チューナーの真ん中に針が止まるということですね。ですからメロディーを奏でた時に違和感なくマッチするわけです。逆に平均律で和音を出したらどうなるか? 「濁り」のあるサウンドになってしまい綺麗に響かない、とされていますね。

このように「ブルーススタイル」=「純正律」、「メロディックスタイル」=「平均律」というのが基本的な分け方。そしてOLIVEは平均律。MANJIは純正律。そうなのです、リード自体は一緒なのですが、チューニングは違うのです!!!

ちなみに、他の楽器では「純正律」と「平均律」の楽器が分かれているわけでないのに、なぜ10ホールハーモニカがこのようにわかれてるか? と言えば、おそらく「キーによって持ち替える楽器だから」なのではないでしょうか。 同じ「ミ」でも、キーが「C」の時のミと、「F」の時のミではその意味は全く変わってしまうから、普通の楽器を「純正律」でチューニングしてしまうと、均一な和音の響きを出せなくなってしまうから現代においては現実的ではない。しかし10ホールのようにキーによって分かれている楽器であれば、純正律で作る方が自然なのでは、ということだったのだろうと推測。ちなみにクロマチックハーモニカは当然平均律です。

さらにちなみにお話すれば、ホーナーの10ホールはゴールデンメロディーだけが平均律で、他は全部純正律(最近のは知らないのであまり自信を持って言えませんが、以前はそうだった)。これがブルースプレイヤーが長らくホーナーを使う人が多かった要因の一つではないでしょうか
「ゴールデンメロディー」にいたっては、メロディーを奏でるのに最適な10ホールという意味で、またはそのチューニングによりメロディーが輝いて聞こえますよ、という意味で「ゴールデンメロディー」という名を付けたと推測します。でもホーナーのそれらのチューニングについて、以前はほとんど公には知られていなかったように思います。というかカタログにそのようなことは書いてなかった(海外のはもしかしたら書いてあったのかもしれないけど)。
チューニングに関してハッキリと示したカタログを作ったのはSUZUKIが初めてなのでは? それにより沢山の人がそのことを知って意識するようになったと思います。これはとても大きな功績だと考えてます。

さらにさらにちなみにお話すれば(笑)、「純正律」にはトレンド?みたいなものがあり、一口に純正律といっても内容的にさまざまなズレのパターンがあるようです。メーカーやカスタマイザー、プレイヤーはさまざまに研究していて、それにより好みや傾向や流行などがあるようで、公表せずとも変化したりしてる模様。もはやクレイジーでございます!!(笑)

どんどん話がズレてゆきそうですが(笑)今一度話しを戻して。

「ブルーススタイル」と「メロディックスタイル」をわける時、その楽器が持つ音色も当然考慮しますね。ただし、音色に関しての趣味はかなり人それぞれわかれるのも事実。よって一つの参考意見、という感じで受取ってもらったらいいかな、と思います。
OLIVEがメロディックスタイルに向く大きな要因としては、やはりその音色にあるでしょう。甘く丸みのある「メロー」な音色は、やはりバラードやシンプルで綺麗な曲などに抜群にフィットしますね。MANJIは明るく派手な音色なのでハードブローなプレイをする時に頼りがいがあり、まさにブルーススタイル向き。しかし空気量を抑えて落ち着いた演奏をしようとすると、途端に落ち着かなくなる(笑)そのような演奏はOLIVEの方が圧倒的に操作しやすく、世界観もフィットする。またリードの反応がすごぶる良いので、速吹きした時にもツブが揃いやすい。特にジャズにおいて、速いパッセージを吹くことは常である。その時にリードが反応してくれないハーモニカはNGです。そしてオーバーブローが実に出しやすい!!!それだけなくオーバードローも出やすい!!!これは凄いことですよ。先日のNAMM SHOWの時もジェイソンリッチはそのことをツバをまき散らしながら力説してた(笑)これだけ精度が高いとオーバーブロー、オーバードローでベンドがしっかりかかるのです!!!もはや10ホールはそういう時代なのですよーーーー 

OLIVEはこの価格(¥3800(税込¥3990))において革命でしょう。10ホール界はもう新しい時代に入っていて、それに対応する品質にするためにカスタマイザーが改良してきたわけですが、そんなカスタマイザー達が作ってきた超高額な物に近いクオリティーを量産品で作ってしまった。

まぁ、こんだけOLIVEの記事を書いてきましたが、やはり音楽は音を聴いてなんぼです(笑) 3月24日(土)14:00(演奏は15:00)お茶の水・谷口楽器にてのOLIVE発売記念イベントに是非来てみて下さい。僕が音を出しながら、演奏しながら解説いたします。OLIVEを使ってジャズを演奏すると気持ち良いんですよ〜〜!!

個人的な今後の使い方は、ライブにおいてはブルースやファンクやロックなど、リズム主体の迫力が必要な曲をやる時にはMANJI、それ以外は基本的にOLIVEを使うでしょう。だからMANJIとOLIVEの両方使いですね。どちらかと言えば音楽的にOLIVEの方が出番が多くなるでしょうね。でも10ホールのレコーディング仕事は「ブルースの雰囲気が欲しい」という注文が案外多いので、MANJIが多い。そして自分のレコーディングやこだわりの曲はFABULOUS(コイツは王様♪)で、という感じでしょうか。使ってゆくうちにまた色々変わってくるから現地点での考えというだけですが。とりあえずMANJIとOLIVEの両方があれば、10ホールの演奏スタイル、欲しい世界観は全てまかなえる。僕的にはライブでFABULOUSの代わりに使える10ホールを切望していたので、OLIVEは「待ってました!」というべき内容のものです♪♪

いや〜、長いね〜、最後まで読んでもらえるのだろうか(笑)

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